40代からの空手道 極真空手の巻 40代からの空手道 〜極真空手の巻〜 キョクシンカラテ  
 
 試し割り講座 vol.1 


大山倍達総裁は常日頃から「試し割り」に関して次のように語っていました。

「カラテの魅力は試し割りにあり」

「『お前の突きより俺の突きが強い』というのを証明するのが試し割りだ。
昔は試し割りのことを”撃破”と呼んだ。
一撃で破壊するから撃破というんだ。
同様に拳を鍛えることを手を熟するという意味で”手熟”といった。
私が海外に行ったとき、いくら型をやっても誰も喜ばない、そんなものは音楽に合わせてやれよ、踊りじゃないかと言われたものだよ。
だが、試し割りをやり、石を割ったり煉瓦を割ったり、コーラ壜を吹っ飛ばしたりすると全く違うよ。
場内がシーンとするんだから・・・
人を殴ることはできないが、これだけの威力があるんだよ、ということを見せるのが試し割りだ。
ただ強さを見せればいいんだよ。
私達は勝負に生きる人間なのだから。
その強さを証明するのが試し割りだ」 

1993年冬季合宿 総裁講話より



極真空手において、試し割りの達人といえば、やはり阿部清文師範でしょう。
阿部師範は3年連続「試し割り賞」を受賞し、31枚という世界記録を保持しています。
試し割り世界王者・阿部師範の試し割りに関するアドバイスの言葉をご紹介させて頂きます。

「まずは、基本稽古でぶれないフォームと技の切れを作ること。
体作りと部位鍛錬はしっかり行うこと。
集中力を持って、一番下の板までパワーが抜けるイメージを持って臨むこと。
あとは、ケガのないように少しずつ挑戦していって下さい。」






極真の大会
においても、第1回全日本大会より競技の一環として行われ、現在でも行われています。
壮年部が出場する地方大会などでは、試し割りをすることはほとんどありませんが、演武会などで急に試し割りをしなければいけなくなることがあるかもしれません。

私は演武の試し割りの経験が豊富で、瓦割りは5回、バット折りは2回したことがあります。
そこで、試し割りの参考書をベースに、私自身の実際の体験を交えて、「試し割り」の技術的なことを見ていきたいと思います。

なお、実際に経験したことがない、「氷柱割り」「板割り」「ブロック割り」に関しては基本的なことのみで、経験が複数回ある「瓦割り」と「バット折り」を中心に見ていきます。




 素材の難易度

「氷>レンガ>ブロック>板>瓦」とされています。

試し割りの経験がない方なら、「瓦」が一番やり易いです。
「板」は天然素材なので、硬度のムラができやすく、また乾燥している状態と湿気っている状態では違ってくるなど難しい点があります。
また、板は一枚一枚硬度のムラが違い不規則になるので、ある枚数を超えると急に割れにくくなる特徴もあります。

試し割り初心者は、「瓦割り」がお勧めです。




 部位鍛錬について

試し割りを成功させるためには、日頃からの部位鍛錬が大切になります。
正拳、手刀、猿臂を日頃から鍛えておきましょう。
そうすれば、突然演武で試し割りをすることになっても、自信を持って臨めますし、失敗やケガのリスクは少なくなります。

日頃から部位鍛錬して正拳、手刀、猿臂等の部位を硬くしていくことは、とても大切です。
阿部師範は次のように語っています。

「部位鍛錬をやることは試し割りの基本だと思います。」
「人間の体より硬い板を叩くんですから、やはり普段から硬いものを叩いて抵抗力を付けていくことは必要なことだと思います。」


砂袋があれば、砂袋で部位鍛錬することが望ましいですが、砂袋がない場合は、他のもので代用します。
私は、「コンパクト・マキワラ」と「コンクリート・ブロック」を日頃から叩いて部位鍛錬するようにしています。
部位鍛錬の詳細は下記ページをご覧下さい。


部位鍛錬 正拳の鍛え方 拳ダコ作り 1-1

部位鍛錬 正拳の鍛え方 拳ダコ作り 1-2
部位鍛錬 正拳の鍛え方 拳ダコ作り 1-3


部位鍛錬 腕(正拳・裏拳・手刀・猿臂)の鍛え方






 試し割りの力学


1,土台の幅(支点)


土台の幅(支点)

瓦でも板でも煉瓦でも、左右の土台の上に瓦や板などを乗せて割りますが、その場合、土台の幅が広ければ広いほど割りやすくなります。

支点間の距離が長ければ長いほど最小の力で割ることができます。
ですから、土台の幅はなるべく広くとるようにしましょう。



2,正確性(力点)



2,正確性(力点)

バット・ブロックを除いた瓦・板・煉瓦・氷柱は、真ん中(中心)に正確に当てることが重要です。
対象物に力を加える部分(力点)は支点間の中心が理想的です。

少ない枚数なら多少真ん中からズレても割れますが、瓦であれ、板であれ、真ん中にヒットしなければある程度の枚数を割ることはできません。
真ん中に当てる正確性が求められます。



3,角度


角度で最も大切ことは、対象物に垂直に当てるということです。
これは試し割りに限りません。
組手でも、突きや蹴りを相手の体に垂直に当てることが、最も相手にダメージを与えることができます。

対象物に対して垂直に当てることで、自分から出るエネルギーを最大限対象物に与えることができます。



4,スピード&タイミング


どんなに筋力があっても、スピードがなければ威力は出ません。
ただし、肩先だけのスピードでは威力は出ません。

重要なことは体全体を使うことです。
手足は全身の力を伝える道具ですから、体全体の動き、体重移動のスピードを上げることが大切になります。



5,パワー


一般的に、体重が軽い人より体重が重い人のほうが有利ですし、筋力がない人より筋力がある人のほうが有利なのは間違いありません。

パワーとは、筋力とスピードを積算した数値を指しますので、一般的に筋力があればそれだけ多くの枚数を割ることができる可能性が高くなります。

また、質量が大きければ大きいほどいいわけで、つまり、当てた部位に体重がのればのるほど威力は増すということになります。

ですが、肩先だけの力に頼ると、多くの枚数を割ることはできません。
大切なのは、いかに全体重を乗せることができるか、鍛えた全身の筋力を使えるかです。



6,面と点


対象物に当たる部分が面であるより点であるほうが有利です。

例えば、正拳なら、きちんと拳頭部分が当たることで、最大限の威力を発揮するわけです。
そういう意味で、基本に則った正しいフォームを身につけておくことが大切でしょう。



7,体の部位の硬軟


部位鍛錬で対象物に当たる体の部位を硬くすることは、試し割りの成否はもとよりケガ防止にもつながるのでとても大切です。

軟らかいものより硬いもののほうが、破壊力があるのは当然です。
ですから、部位鍛錬は重要です。
正拳、手刀、猿臂等を硬くしましょう。





 試し割りの練習について


1,ぶっつけ本番はダメ、自分の実力を確認することが大事

試し割りは道場で指導してくれませんので、どうしてもぶっつけ本番でやることになってしまいがちです。
ですが、これは極力避けましょう。

何故なら、試し割りの失敗は即ケガにつながる可能性が高いからです。
ですから、本番前に必ず予行練習をすることをお勧めします。

事前に予行練習することで、自分が瓦を何枚割れるのか、バットを何本折れるのか確認できますので、予行練習することが重要です。

自分の実力が事前に分かっていると、本番でも自信を持ってできますし、失敗・ケガのリスクが減ります。



2,無理は絶対ダメ


ぶっつけ本番と関係がありますが、自分の本当の実力を知らずに試し割りをすることは、失敗の可能性が増しますので危険です。

また、例えば瓦割りの場合、瓦が高く積み上げられるほうが見栄えがいいですし、どうしてもカッコつけたいあまり、分を超えた枚数を積み上げてしまい失敗する。
やはり何事も「自分の分」を超えた無謀なことは避けるべきなので、自分が「割れる」範囲内でやることが大切です。

社会人にとって仕事が第一ですから、無謀なことをしてケガをすることは本末転倒になりますから、避けなければいけません。



3,予行練習は1ヶ月以上前にやる


予行練習は、なるべく本番の1ヶ月以上前によるようにしましょう。
何故なら、あまり本番近くにやると、ダメージが残っている状態で本番を迎えることになり、ケガやベストのパフォーマンスができず失敗のリスクが増すからです。

日頃から部位鍛錬をしっかりしている人なら別ですか、あまり部位鍛錬していないなら、なおのこと本番と練習の間隔を空けたほうが賢明です。

これは私自身の経験です。
以前、演武で猿臂で瓦割りをすることになったのですが、念のため1週間前に予行練習をやったのです。
ですが、この練習で猿臂を軽く痛めてしまい、本番を迎えることになってしまいました。
幸い、本番は成功しましたが、この経験から、本番と予行練習はなるべく間隔を十分に空けるほうがいいことを学びました。




>>>試し割り講座 vol.2
>>>試し割り講座 vol.3


※参考書籍 

秘伝 極真空手 / 大山倍達
これが試し割りだ 入門編 / 大山倍達
極真空手入門 / 郷田勇三
勝つ!ための空手 / 石井和義
ワールド空手 2008/10(特集 試し割りバイブル) 他



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