『人間というのはみんな違う。
強くなるための稽古も、みんなそれぞれ違う。
同じ基本を同じようにやっても、すぐに強くなる人もいれば、なかなか強くならない人もいる。
最初のうちは急速にうまくなったが、しばらくしたら止まってしまう人がいる。
最初はなかなか上達しなかったが、ある時期がきたら急にうまくなる人もいる。
むかし、若木竹丸という先生のところで練習したことがある。
若木先生は日本にボディビルを紹介した先生でたいへんな力持ちであった。
若木先生のところへ行って、私ははじめでバーベルというものを知った。
それまでは米俵を持ち上げたり、石を上げたり、キューカンという鉄棒にコンクリートの固まりを通したようなものでやっていた。
若木先生の練習のしかたは、たとえば、100kgなら100kgのバーベルが上がらないと、95kgのバーベルに100gか200gのトタン板を毎日加えていった。
10日たつと1kgになる。
そうやって記録を伸ばしていた。
そのやり方も変わっていて、まず本を1ページを読む。
そして部屋を一まわりして10回なら10回上げる、
また本を1ページ読んで・・・という方法で一日6時間ぐらい練習していた。
ただ、これは若木先生のやり方であって、誰でもこの方法がいいとは限らない。
集中的に2時間やった方がいい人もいるだろう。
私はどうやったかというと、若木先生とはまったく逆の方法だった。
100kgのバーベルが上がらないとすると、私は尻に畳針を刺してもらって、その衝撃で一気に上げてしまうという方法でやった。
やる時もほとんど休まずやった。
どちらがいいか、という問題ではない。
強くなるためのやり方は人によって違うということである。
どの方法がいいかは結局のところ自分で試行錯誤しながら見つけだしていくしかない。』
極真空手93(極真カラテ年鑑第13号) 巻頭言より |