『ヨーロッパ勢の実力を考えるとき、われわれ日本のカラテ家は、原点に立ち帰る必要がある。
カラテを修業することの原点とは何か。
それは、稽古を積み重ねることに他ならない。
ヨーロッパは、確かに強くなった。
では、日本が弱くなったのかといえば、そうではない。
日本の選手が稽古熱心じゃなくなったんだ。
私の見る限り、10年前の選手たちと今の選手たちでは、稽古に対する意欲がまったく違う。
現在の社会がすべてに恵まれ過ぎているせいか、今の稽古には覇気がない。
また、一人ひとりの稽古量も少ないと思う。
トンプソン(マイケル・トンプソン)は仕事を持っていながらも、1日に2回稽古している。
本部の黒帯で、1日に2回稽古している者がいるか。
いてもわずかだ。
黒帯を締めたぐらいで少し偉くなったような気分でいるようでは、自分自身の進歩は何も望めないよ。
カラテは、相手よりも速く、強く、うまくなければいけない。
そうすれば、絶対に負けることはない。
そうした技量は、どこで培うか。
それは稽古をおいて他にはないんだ。
よく、総裁は誰々を可愛がっている、などという言葉を耳にする。
それは間違いである。
稽古を一生懸命にするから、その者が可愛い。
ただそれだけである。
この気持ちは、誰に対しても共通だ。
女子部にも、少年部にも、壮年部に対しても同じである。
強くなるためには、稽古をたくさんしなければいけない。
たとえ他の者の倍の稽古をしたからといって、道場の使用料が倍になるわけではない。
むしろ私は、感謝状を出したいくらいだ。
カラテの稽古は、士魂空拳である。
誰のためでもない、自分のためだ。
だから、意欲をもって、稽古に臨んでもらいたい。
それが今の日本のカラテにとって、一番大切なことである。』
大山倍達(1989年7月29日 極真会館夏季合宿講話より) |