『体が小さいということは、常識的に考えれば格闘技にとっては不利である。体が硬いということもカラテにとっては不利であろう。だが、ここで考えてもらいたいことは、体が大きく、軟らかくて、目が良くて、運動神経も発達しているし、根性も備わっている、そんな人間が世の中に何人いるか、ということである。
みんな、どこかに欠点を持っている。弱点を持っている。それを克服して強くなろうとしているのである。そのためにカラテを習う。稽古がある。武道の稽古は修行と言われるように、楽しいものはなく苦しいものである。なぜ苦しいのか。自分の欠点や弱点を見つめてそれを克服する自分との闘いだからである。そこで、こんなことは嫌だ、といってやめてしまえばそれまでである。
だから、本当に強くなろうと思ったならば、体が小さいの、硬いのという前に、まずやってみることではないか。本当に強くなりたいと思ったら、自分で崖っぷちに追い込んで、自分にはカラテしかない、カラテをとったらなにもない、というぐらいのつもりで肚を決めてやるべきではないか』
大山倍達(1994年2月 口述より)
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