『稽古をするときに、空蹴りのときなど、蹴った足を下ろす音が、バタンバタンというのは、いかにも威勢がよくて、本人たちは稽古しているつもりになるかもしれないが、あれは間違いである。
カラテの稽古というものは、薄紙、薄氷を踏むようにしてやるものなので、拳、蹴りが空気を切る音しかしないというのがほんとうである。
そのため、以前は昇段審査のさいに、濡れた障子紙の上で空蹴りをさせたこともあったぐらいである。これは、事前事後の用意、片付けが大変なのでいまはやっていないが、一度これを経験すれば、稽古のときに気をつけるようになっていいと思う。
軸足、腰がしっかりしていたら、蹴り足を戻すときに、バタンというような音は出ないものだ。
軸足の方も、名人のそれは決してぶれない。軸足の親指一本で微動だにせず全体重が支えられているものだ。蹴りはすっと出て、すっと戻る。これが、最後まで足腰の筋肉で制御されていなくてはならないのである』
大山倍達(「極真の精神」より)
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