極真会館第17回全日本大会4回戦 松井章圭VS堺貞夫
この試合、結果に関しては色々と物議を醸したわけですが、それは横に置いておきます。
必死に闘っている選手とは別次元の問題ですから。
括目してほしいのは、その「内容」です。
これほどの試合はそうはありません。
私がリアルタイムで最初に極真の試合を観たのは、確か14回全日本大会だったと思います。
以降、生観戦した昨年の世界大会まで、ずっと全日本大会、世界大会を観てきて、これほどのレベルの高い、奥深い試合、考えさせられる試合はなかなかありません。
この大会後、大山総裁は次のように語っています。
『この大会で特筆すべきは堺貞夫の活躍だ。堺は武道の真髄である円の動きを巧みに使っていた。また受けが一番うまかった。防御すなわち攻撃だということが如実に現われていた。彼の活躍は、体の小さい道場生にも希望の光をもたらした点でも素晴らしい』
堺氏の空手は、「点を中心に円を描き、線はそれに付随するものなり」という空手の定義を正に体現したものといって差し支えないでしょう。
この堺氏の組手スタイルを、「体重判定狙い」「受けだけ」と言う方もいるでしょう。
ですが、私はそう思いません。
何故なら堺氏は、この17回全日本大会の1回戦では中段廻し蹴りで技有りを奪い、続く2回戦では上段廻し蹴りで一本勝ちしているからです。
さらに3回戦では、後の全日本王者である桑島師範にも勝っています。
この松井館長との一戦でも、徹頭徹尾松井館長の攻撃を捌きながら、隙を狙って倒そうと狙っているのがよく分かります。ただ、松井館長にその隙がなかっただけです。
▲本戦 堺氏の視線を一瞬下に落とすフェイントからの上段廻し蹴り
堺氏は、身長157p、体重60sという超小柄の空手家です。
この超小柄の体格で、本戦、延長、再延長と、全日本王者(後の世界王者)の松井館長と互角に闘った、その空手はただただ「凄い」と言えるでしょう。
武道の世界は、偶像化、神格化が顕著な世界。
「ガチなら○○のほうが強い」「最強は○○」などという不毛な議論が多く閉口するばかりですが、リアルな「空手の達人」がここにいたことは、この動画を観るだけで認識することができると思います。
壮年部、体の小さい空手家に是非この試合を観てほしいと思います。
体格を言い訳にしてはいけないことをこの試合は教えてくれます。
「小よく大を制する組手」のヒントがこの試合の中にあると思います。
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